過日、理事長といろんなお話をしていた時のこと。「百田尚樹の日本国紀、面白いよ~。少し長いケドね~」・・・表紙は何度も目にしていた。文庫本の平積みコーナーでは結構存在感がある。400ページくらいの厚さの上・下だから。以前読んだ「カエルの楽園」が面白かったから気にはなってたが、少し先入観を持っていたのだ。彼は少し右寄り(誤解なきようお願いしたいが僕には右も左もない。どちらの考えも肯定も否定もしていない)系なので、「国の歴史」を穿った目線で書いていたらどうしよう、と思っていた。でも「理系」の理事長(「医師」は理系だ!と決めつけている自分が切ないが)だって日本史の本を読んでいるのにね、と考え直し購入。。。これまでも日本の歴史が絡む話になると「受験は世界史だったんで日本史はちょっと…」と逃げまくってたのだ。ところが、ある日の江戸幕府の政策についての話題で「~~という面白いラクシュがあるのよ~」とのお言葉。??ん?ラクシュ? その場はスルーして後で調べた。「落首。風刺や嘲りの意を含んだ戯れ歌」う~ん、理事長はスゴい。で、後日告白。「この間「ラクシュ」という言葉を初めて聞きました。スゴいっすね」「何言ってるの。アナタ、ブンガクブでしょ。」「お恥ずかしい。でも僕、現代文学専攻で…」と意味不明な言い訳。
てな訳で「日本国紀」を読んだ。縄文・弥生時代から幕末までの(上)。明治維新から令和までの(下)。その中で僕が特に面白く感じた箇所をピックアップしてみたい。今回は字数の都合上、1つだけ取り上げて少し紹介してみたい。
「飛鳥~奈良時代」の章に「防人」についての記述があった。防人の詩というさだまさしの名曲が浮かぶ。観ていないが「203高地」という映画の主題歌だった。話が逸れた。戻そう・・・ブンガク的には「万葉集」の時代。各単元の合間に「コラム」のコーナーを設けている。万葉集はおエラから防人まで多くの人の歌が載っているのだが、百田さんは超有名な歌を取り上げて万葉仮名の難解さを教えてくれる。現代文学が専攻?の僕ですら知ってる歌だ。
「東の野に炎(かげろう)の立つ見えて かえり見すれば月傾きぬ 柿本人麻呂」
「東に朝日が、振り向くと西に月が沈んでいく」という歌。東と西、昇る太陽と沈む月。人生の盛衰、老若…そんな切なさを感じる歌。この万葉仮名、つまり万葉集に載っている状態は
「東野炎立所見而反見為者月西渡」 だそうだ。面白い。以前このコラムに書いたことがあったが、ウクライナの女性が作った俳句を英語に落とし、和訳する作業に似ているような気がしてパズル感覚になる。「炎」と「西渡」の扱いが絶妙な気がする。
この本、「日本国紀」は現代までの歴史を時の流れに沿って語ってくれているけど、やっぱり反応しちゃうのはコラムのコーナー。こぼれ話的な内容が好きだ。僕はつくづく週刊誌的な巷間のネタが好きな庶民だ。あ、そう言えば僕の好きな深沢七郎の「庶民列伝」という面白~い作品があったっけなぁ。