特に気にしているわけではないけど、2年続けて「本屋大賞」にランクインした作品を読んだ。去年は大賞2位の「ライオンのおやつ」で感動してこの欄に紹介していた。「題名」のインパクトは重要で、読み手の想像力を駆り立てるものには手が出る。今年度も10作品の大賞候補のタイトルが発表されたが、中でも「52ヘルツのクジラたち」は群を抜いて興味深かった。まるで作品の内容を予測できなかったから。(確かに去年の「ライオンのおやつ」もフツーに想像した内容と違うモノだったけど)。だから、今回は少しだけ「表紙の帯」を読んで内容の情報を得ていた。で、ますます興味を持ったので購入した。作者は1980年生まれの町田その子さん。内容がとても重たいが、表現や文体が僕向けで読み易かった。しかも最近コラムで取り上げている「LGBT」に関係する内容も入っているので遅読の僕でもあっという間に読み終えた。
どれくらい「遅読」か。実際あったことを思い出した。確かブンガクブの1年か2年の時、夏休みの課題を出された。堀〇先生は覚えているだろうか。「南総里見八犬伝」と「水滸伝」を読んで比較せよ、とかってヤツ。僕は「水滸伝」の下巻(上、中、下の3巻セットだった)の途中で断念。当時は「ネットで検索」などもない時代。「ネタバレ」のようなあらすじがわかるようなツールは皆無。最後どうなるかを勝手に推測してリポートを提出。あとで聞いたら全く逆の展開だったようで読んでないことがバレバレだった。根はマジメなんだけど小学校時代から休み中の宿題ドリルなんかはほぼ最後まで終えることが出来なかったので「遅読」のためだったかは自分でもわからない。しつこいけど僕は「根」はマジメだ。
また話が逸れたので戻します。「帯」の文を紹介します。「52ヘルツのクジラとは、他の鯨が聞き取れない高い周波数で鳴く世界で一頭だけのクジラ。たくさんの仲間がいるはずなのに何も届かない、何も届けられない。そのため世界で一番孤独だと言われている」。。。主人公の貴瑚は実母と義父から虐待を受けて育った。高校時代の友人と街で偶然再会し、その同僚のアンさんに身も心も救われるが、真剣に交際した男性から離れることになり大分までやってくる。で、自分と同じような虐待に遭っている声の出ない少年を助けることになる、という筋。虐待の話やアンさんの自死など切なすぎる場面もいくつかあるが親友の美晴や真帆(オトコです)の優しさ、心を開く愛(少年の名前です)など穏やかな心で読める箇所も多い。「ネタバレ」になっちゃうけど「アンさん」は「安吾」と名乗っているが実は「杏子(あんず)」という名の女性だった。トランスジェンダーである苦しみが伝わる。
去年も本屋大賞トップ10を2作購入していた。今年も2冊。そのほかの作品は文庫になって安くなってから買おうっと。あ、購入したもう1冊のタイトルは「犬がいた季節」。もったいないから少し温めてから読もうかな。