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スタッフコラムStaff Column

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  1. 2024/03/28スタッフコラム

    祖母への想いと作業療法士という仕事

    祖母を当院で看取り、一周忌を迎える。90年間大病もせず、家事に農作業にとよく働いた祖母が自宅生活を送れなくなり1年会えない日が続いた。

    県南の自宅から約90km、祖母が住み慣れた土地を離れることは家族共々覚悟が必要だったが、コロナ禍に私が祖母と過ごす方法はこれしかない!

    と決意し、家族も理解を示してくれた。

     

    私自身は卒後から精神科作業療法に従事し、祖母を迎える前には認知症治療病棟へ異動になっていた。リハビリと一口に言ってもご高齢の患者様の

    多くは合併症を抱え、その自立度や症状、生活背景は多様で求められる対応も多岐に渡る。異動を機に大急ぎで学び直すことになったが、結果として

    祖母を受け入れる準備にもなっていた。

     

    偶然にも数年ぶりに兄が地元の病院に異動になり、自宅では父を中心に、次は母が勤める施設、続いて兄、最後は療養型病院に勤める私、といった

    具合にリレー形式で祖母を看ることになった。入院後は最期の時まで祖母らしく在ってほしいという想いを汲み、主治医は病気だけでなく祖母の

    入院前の暮らしや人となりを尊重してくれた。また、看護師や介護士は身体拘束をしないためにケアを工夫し、忙しい合間に祖母と対話の時間を

    作っていた。それから、病室を訪れる清掃員は顔を合わせる度に励ましや労いの言葉をかけてくれていた。最期を迎えた時には「もっとして

    あげたいことがあった」と悔やみ、「おばあちゃん幸せだったよ」と共に涙してくれる職員がおり、状態変化に一喜一憂し、祖母孝行が叶え

    きれなかったと後悔する日も、その姿や言葉を思い返すと気持ちが和らいでいく感覚があった。そして、形を残した立派なお骨を見た時は

    その堂々たる姿に誇らしさを感じた。

     

    どの分野にも共通して、作業療法士の仕事は“その人らしさを支えること”だと考える。祖父母の田畑の仕事を見て育ったことは患者様との稲作り

    につながり、嚥下が難しくなった患者様との関わりは祖母を看る上で非常に活きる経験になった。

     

    こうして祖母らしい瞬間に居合わせ、孫として幸せな時間を過ごせたことは信頼できる方々との出会いと家族の理解がなければ実現できず、

    皆様に与えてもらった時間だった。この場を借りて感謝申し上げます。そして、作業療法士としてご本人やご家族の想いを大切に、その人らしさを

    支えていくことが私の使命で、祖母の供養にもなると考えている。

     

                                                       リハビリテーション科 I